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CSVファイルの作成と、脈波指標の2次元要素

1.目標
 アルテットは脈波計として、反射型光電センサーで指尖容積脈波を測定しますが、測定結果表示ソフトウェアは、社会的に問題となっている動脈硬化の一次予防に有効な、血管老化偏差値と血管年齢を加速度脈波から算出して、表示するように作られています。
 しかしながら、アルテットは単なる血管年齢測定装置ではなく、パソコン直結型脈波計として、算出した血管老化偏差値や加速度脈波の平均波形はもちろんのこと、加速度脈波平均波形のa,b,c,d,e波の波高値、時間間隔などの特徴量と統計量(統計量は、a−a間隔に付いてArtett_Cのみ)が、データベースに保存されています。さらに、測定した容積脈波の原波形データ、一拍毎の個別加速度脈波の特徴量などが中間データファイルとしてエクセルのCSVファイルとして保存されており、Artett_Cでは、それらのデータを元に、統計解析と周波数解析を行い、解析結果を再表示できるように作られています。
 このように、パソコン直結で測定・解析された全てのデータがファイル保存されていますので、エクセルの計算・解析機能を使いこなせば、色々な視点から脈波データを検討することができます。ここでは、アルテットでの測定データを加工するのに便利なエクセルの機能を中心に、アルテットの活用法を紹介します。

2.紹介する活用法の概要
 測定結果データベースから、主要な波形特徴量パラメータを抽出して、エクセルのCSVファイルを作成し、エクセルの計算・グラフ作成機能を用いて、Waveform index と他の波形特徴量パラメータの関係を検討してみます。また、容積脈波の特徴量との関係に付いても考察してみます。
 なお、以下の説明において、アルテットのより具体的な操作法に付いては取扱説明書を参照してください。

3.CSVファイルの作成
 アルテットで測定・解析した結果データは、データベースに登録されていますが、このままでは多くの測定データ間の二次的なデータ解析には不便です。そこでEXCELの豊富なデータ解析機能が使えるよう、必要なデータのみを抽出して、EXCELのCSVファイルとして保存することができます。メニューバーの[ファイル]から[CSVファイル出力]を選びます。


 必要な「出力フィールド」を「追加」して、「フィールド名出力」をチェックして「保存」すると、例えば表1に示すようなファイル出力を得ることができます。


 ここでは、項目として、測定番号、受診者番号、性別、年齢、脈拍数、血管老化偏差値、備考、Waveform indexT、b/a、c/a、d/a、e/a を抽出して出力しています。ここで、備考は、メニューバーの[測定結果表示]から、測定データを検索して右クリック「追加情報入力」により測定毎に手動で入力します。





表1 CSVファイル出力の例(一部)

測定番号 受診者番号 性別 年齢 測定日時 脈拍数 血管老化偏差値 備考 Waveform index I b/a c/a d/a e/a
131 3 1 34 2003/11/19 12:52 75 57 運動前 0.261 -0.542 0.05 -0.28 0.067
132 3 1 34 2003/11/19 13:00 107 53 運動直後 0.354 -0.513 -0.17 -0.159 0.059
133 999 1 43 2003/11/19 13:07 101 41 0.592 -0.664 -0.166 -0.072 0.178
134 3 1 34 2003/11/19 13:15 89 45 15分後 0.529 -0.711 -0.03 -0.182 0.136
135 3 1 34 2003/11/19 13:41 88 60 40分後 0.188 -0.485 -0.05 -0.296 0.084
136 999 1 43 2003/11/19 14:01 71 48 0.419 -0.739 0.006 -0.32 0.183
137 19470908 0 56 2003/11/20 11:15 68 47 運動前 0.233 -0.497 -0.202 -0.264 0.167
138 19470908 0 56 2003/11/20 11:24 105 44 階段昇降一回目直後 0.322 -0.509 -0.251 -0.187 0.05
139 19470908 0 56 2003/11/20 11:28 125 37 階段昇降二回目直後 0.556 -0.727 -0.342 -0.171 0.152
140 19470908 0 56 2003/11/20 11:36 78 40 五分後 0.447 -0.591 -0.209 -0.144 0.17
141 19470908 0 56 2003/11/20 11:50 76 42 20分後 0.381 -0.584 -0.196 -0.204 0.227


4.エクセルグラフの作成
 前節で作成したCSVファイルを元に、二次元分布図を作成してみます。

*これから作成するグラフの説明
 Waveform indexT(XI)は、式
   XI = d/a - b/a
で計算します。それでは、波形特徴量b/aとd/aの関係をグラフで表すとどうなるのでしょうか。また、そのグラフ上でXIは、どのように表されることになるのでしょう。
 難しいことを考える前に、前節で作成したCSVファイルから、横軸をb/a、縦軸をd/aにしたデータを、エクセルグラフの散布図を使って、二次元のグラフにプロットしてみます。ここでは、運動したときの脈拍数が早いときのデータなど排除するため、脈拍数でデータの並べ替えを行い、脈拍数が60〜80までのデータをプロットしてみました。ここでは、30歳から72歳までの方に測定にご協力いただいたときのもので、30歳未満の方のデータは含まれていません。

図1

5.Waveform indexのグラフ
 このグラフ上で、Waveform index XIはどのように表されるのか、次のグラフを見てください。
右上がりの線がいくつか引いてありますが、この線上ではXI が一定となります。この線に沿って右上がりに進むと、b/a も d/aも値が増えますが、差(d/a−b/a)つまり、XI は一定です。


図2

 次に、年齢ごとの分布を考えてみます。被験者の年齢を5歳刻みの年齢帯に分けて、Waveform indexがどの範囲に分布するか、このグラフで確認しておきます。次のグラフは、50歳から54歳の年齢範囲の男性のWaveibdexの分布範囲を示したものです。傾向としては、若い年齢帯ほど分布範囲は狭く、高齢になるほど分布範囲は広くなります。

図3


 ここで、22歳男性の加速度脈波をほぼ一ヶ月にわたって測定した例を示します。最初は午前10時ごろ、12時ごろ、午後14時ごろ、午後17時頃の一日4回測定、途中で10時と17時の2回測定です。7月12日までは、今までとおりの運動無しの生活。その後、出社、帰社のときに、一駅の距離(片道約2Km)を歩いてもらうことにしました。少し見難いですが、グラフ上で、白抜きマークの実線が運動前、塗りつぶしマークの破線が運動開始後の値です。明らかに波形指数が良いほう(グラフ上、左上方向)に変化しているのが見られます。
 また、この男性の場合、運動前には、横方向(b/a)よりも縦方向(d/a)の変化の方が大きいですが、運動後は逆に縦方向(d/a)よりも横方向(b/a)の動きの方が大きくなったようです。

図4 (画像をクリックすると拡大画面をご覧いただけます)


容積脈波の評価

1.容積脈波の基線補正

 光電式の容積脈波は、測定部位の血管の容積を見ていますが、心臓の拍動に伴う脈波としての交流変化以外に、血管の緊張・弛緩により、脈波の振幅を超える基線変動を伴います。このため、容積脈波の極小点、極大点などの波形特徴量を求めるときには、この基線変動を勘案し、補正する必要があります。
 加速度脈波は容積脈波を二回微分したものですが、微分の特徴として基線変動の影響を受けにくい、ということが上げられます。特に、脈波一拍の時間間隔程度では、基線の変動が時間とともに一定の割合で変化するとみなせるような場合は、加速度脈波は基線変動がない場合と差がありません。さらに、時間とともに変化率が変わるような場合も、基線変動が時間に対して二次式で近似できるような場合、加速度脈波の全体に直流成分が加わる(位置が上下方向にずれる)だけで、形そのものは変化しないので、極大位置などの時間情報は、変化しないことになります。
 加速度脈波では、容積脈波のボトムの直後の立ち上がりで変化率の変化割合が最大となり、このピークが a波として観測されます。このa波から次のa波までの時間間隔(a-a間隔)を脈拍間隔として測定しますが、上で述べたことは、加速度脈波のa−a間隔として求めた脈拍間隔は、よほど基線変動が大きくない限り、基線変動の影響を受けない、ということを意味します。
そして、このa-a間隔で一拍ごとの個別加速度脈波を切り出して、これから、加速度脈波の平均波形を求めます。先ほど容積脈波の基線変動が大きいときに、加速度脈波に直流成分が加わる可能性を述べましたが、平均化処理によりこの直流成分は無視できるほど小さくなります。
 このことから、座位測定など体が動かない状態で測定するときには、加速度脈波の波形特徴量は基線変動の影響を受けずに測定できることが分かります。

 そこで、加速度脈波から、積分により容積脈波を再構成することが考えられます。ここでの問題は、積分を開始する基点のとり方により、逆に基線変動が発生するということです。加速度脈波を一回積分すると速度脈波になりますから、速度がゼロになる点、つまりは、容積脈波のボトム(極小点)から積分を開始するのが正解です。
 ところが、容積脈波のボトムはまだ求まっていないわけですから、仮に、この直後にある加速度脈波のa点を基点として積分を開始することを考えます。これを、@_dataフォルダーにある加速度脈波の平均波形について、EXCELで試してみましょう。(記録されたデータを直接操作する場合は、かならず、別フォルダーにコピーを保存した上で行ってください。)
 @_dataフォルダーのデータは、1ミリ秒間隔のデータの波形データがA列一列に記録されています。B列に一回積分した値(速度脈波)を、C列に二回積分した値(容積脈波)を計算してみます。積分は和で近似計算します。B列の各行については、a波の時間位置からその行までのA列の和を計算すればよいのです。B列各行に入れる計算式としては、B列直前のセルの値に、隣のA列のセルの値を加えればよいのです。
 @_dataフォルダーのデータでは、a波は125ミリ秒の位置にあり、経験的に容積脈波の極小点は、a波の前25ミリ秒(最初から100ミリ秒の位置)付近にあります。そして、容積脈波の極小点では、その微分、つまり速度脈波はゼロとなります。そこで、実際の操作としては、このデータの隣100行B列に値 “0”を記入し、その下101行B列には、"100行B列+100行A列”の計算式を入れ、この計算式をB列の102行から下の行にコピーします。また、その上99行B列には、"100行B列-100行A列”の計算式を入れ、この計算式をB列の98行から上の行にコピーします。
 つぎに、C列には、1行目をB列1行目の値を入れ、C列2行目を”1行C列+2行B列”とし、以下の行にコピーします。
 編集したテーブルの関連部分を次に示します。

A B C
経過時間 加速度脈波 一回積分 二回積分
91 1530 -17187 -3490179
92 1601 -15586 -3505765
93 1675 -13911 -3519676
94 1750 -12161 -3531837
95 1827 -10334 -3542171
96 1905 -8429 -3550600
97 1985 -6444 -3557044
98 2065 -4379 -3561423
99 2148 -2231 -3563654
100 2231 0 -3563654
101 2314 2314 -3561340
102 2399 4713 -3556627
103 2484 7197 -3549430
104 2569 9766 -3539664
105 2654 12420 -3527244
106 2739 15159 -3512085
107 2823 17982 -3494103
108 2906 20888 -3473215
109 2989 23877 -3449338

計算した波形をグラフにしたものを次に示します。


このあと、容積脈波の基線の傾きが0となるように積分の開始点を補正し、
極小点が0となるよう、オフセット調整します。


2.加速度脈波と容積脈波の関係

 結果の例として、加速度脈波の指標b/a, d/aの値によって、
容積脈波の波形が変化する様子を、まとめて見ました。こちらを見て下さい。
 容積脈波では、波形の形状を表す指標として、AI値(Augumentation Index)が使われることがあります。
 そこで、AI値を、加速度脈波のb波とd波の(a波からの)時間位置TabとTadにおける、
容積脈波の波高値から、算出するソフトを作成してみました。
ご要望に応じて、ご相談ください。


(つづく)

心電&脈波同時測定 
   USB4ch生体情報測定ユニット(研究開発用)活用例のご紹介

[脈波3Ch心電1Ch同時測定システム]
                         (東京海洋大学 佐野研究室様)

  *   脈波は、指先以外に、頭部、脚部などを測定
  *   心電は、双極胸部誘導もしくは双極肢誘導を測定
  *   脈波指標と心電指標、脈波伝播速度などを同時に評価できるので、従来心電計測に限られていた検査が、
     脈波でも可能であることが検証できるようになりました。

      “加速度脈波による脈波伝播速度の計測の試み”スポーツ整復療法学研究、Vol.8, No.1,2, 2006.9
      “加速度脈波を指標にした仰臥位顔面冷却法による潜水反射試験の試み” 同、Vol.6, No.1,2, 2004.9

<ソフトウェア>

     脈波3Ch・心電1Ch波形表示・ピーク検出・ファイル出力機能
   加速度脈波3Chと心電図の波形を解析し、一拍ごとの次の特徴量を算出、ファイル出力します。

O 加速度脈波
 
・  a波の振幅aとa波を基準とする振幅比:b/a, c/a, d/a, e/a
 ・  
a波の時間位置:Taと時間間隔(脈拍間隔):Taa
 ・   
a波から各波までの時間間隔:Tab, Tac, Tad, Tae

O 心電図
 ・   
R波の時間位置:Trと時間間隔:Trr
     
心電R波から加速度脈波a波までの時間間隔:Tra

     加速度脈波変動解析機能
     波形ピークデータ時系列出力ファイルを読み込んで、最大エントロピー法(MEM)およびFFTにより、周波数解析します。
     周波数解析結果は、高周波成分と低周波成分のパワー値、パワー比なども合わせて算出・表示、ファイル出力します。

<心電・脈波同時測定例>

測定画面
CH1:左手人差し指  CH2:右手人差し指  CH3:額  CH4:双極肢U誘導




測定結果の例

 

アルテットCによる測定事例

<測定事例紹介>
{1}アルテット・Cで、喫煙後の波形変動を測定してみました。(男性53才)                                   

下の図は、一拍ごとの脈拍間隔を5分間に渡って追跡したもので、ちょうど真中あたりでタバコを吸いました。
縦軸が脈拍間隔で、580msecから740msec、脈拍数で81から103の間で変化しています。
単に、喫煙により脈拍が上がっているだけではなく、小刻みな揺らぎがあって、喫煙によりその揺らぎのパターンが変化していることがわかります。

 

波形は10分〜数10分で悪く(循環抵抗大)となりました。交感神経活動の指標とされているLF/HFは一旦高くなりますが、その後逆に低くなる期間が見られます。


2] 運動の効果
脈波日記のI君(22歳)の波形指数の変化をまとめてみました。
第2週より、行き帰りの通勤時に一駅歩き始めました。
改善効果が良くわかります。
曜日による変化もあるのでしょうか。



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